「工場らしさを感じさせない佇まいを」──その想いを出発点に、従業員の皆様と幾度となく打合せを重ね、CGによる検討を通じて、外観から内部空間に至るまで丁寧に設計を積み上げてきた。

外観は黒を基調に、工業的な堅さではなく、凛とした存在感と落ち着きを備えた表情をつくり出している。内部空間はグレーを基調としながら、企業のコーポレートカラーである翠色が柔らかく際立つように構成。素材と色彩のバランスによって、静謐な中にも芯のある空間を目指した。

特に内装においては、床仕上げの色味を壁紙にもわずかに取り入れることで、空間全体に調和のあるトーンをつくり出している。光が壁面に触れたとき、床から続く色の揺らぎが微細なグラデーションとなって広がり、柔らかな光環境を演出する。

夜になると、南北両面に設けた看板が、スポットライトや内照式照明により浮かび上がり、日中とは異なる印象をまとう。時間によって変化する光のあり方が、建物の表情に奥行きを与えている。

また、本建物は河川敷に隣接する立地特性から、BCP（事業継続計画）を見据えて全体を小上がり構造とし、水害リスクへの備えを建築的に担保している。機能性と意匠性、そして企業の理念と調和する空間として、細部にわたる配慮を重ねて実現したプロジェクトである。